たびぷら

行った気になって楽しむ妄想旅やリアル旅、日常のこと

【旅な本】天国はまだ遠く

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読み終わった瞬間、これぞ旅だよなあ。
としみじみおもった。

 

主人公、千鶴は人里離れた「民宿田村」で睡眠薬自殺したつもりが、結局はグースカ寝て、なんとなく元気になって、自殺する気力みたいのが削がれて、そのままなんとなく民宿に居続ける日々。

 

淡々と、特別な事件が起こるでもなく時が過ぎていく。

海や山のなかで、少しずつ弱ってた部分が回復してるんだろうけど、何せ、千鶴がホントに変だから、脱力するんだよね。

 

でも、その脱力がすっごく良くて

、自分も脱力した感じになってのんびりゆっくりした空気に包まれちゃう。

 

千鶴は無防備だし、田村さんも飾り気のない人で、お互い割とズケズケものをいう、色気なんて1ミリもないんだ。

だから無駄な緊張感もなくてホッといられる。

 

田村さんだって、そこに生きることへの葛藤や悩みもあるはずなのに、すごく強く見える。

 

田村さんという人に憧れるし、ああいう人になりたい。と思う。

でも、読んでて気付いてしまった。

私は田村さん側じゃないということに。

私も千鶴と同じ旅人側で、そこから必ずどこかに帰る人なんだ。

 

だから憧れるんだ。

田村さんの本質を知っているわけじゃない。垣間見ただけだから。

 

絵画や写真、物語と同じ。旅人はあくまでも観客なんだ。参加させてもらうことはあっても、その中で「主人公」になることはない。

 

千鶴が感じたそこにいることの違和感はそういうことなのか…

 

別れも急で、何かありそうで何もなくて、あっけないんだけど、それがとても現実味があるのです。

 

また行くかも、そう思って終わる。

だから旅はやめられない。